指針改定後、現場の保育は変わったのか?

今回の保育所保育指針改訂により保育施設の幼児教育の積極的な位置づけが強調され、保育士も教育者としての役割を担うようになりました。

しかし現場の保育士の多くは養成校において教育専門職として、非認知能力(社会情動的スキル)を育む具体的な教育手法をほとんど学んでいませんし、現場に出てからもそれらの知識やスキルを教えてくれる先輩が圧倒的に足りない状況です。

今回の改定で指針に新たに記載されている「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」という3つの資質・能力について(各種書類等のフォーマットが多少変わったとしても)現場の保育実践にどのような具体的変化があるのかまだ手探りの状態だと思います。

結果として非認知能力(社会情動的スキル)が重要視されるようになった今でも、現場の保育実践はそれまでと何も変わっていないと言っていい状態であり、それを具体的に学ぶ機会がないまま昨日と同じ保育がまた今日も繰り返されるだけとなっているようにも思います。

保育士が読むべき「教育原理」の教科書

シードブック 改訂 子どもの教育原理
北野 幸子
建帛社
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本書は、2011年に発売されたものを2018年の幼稚園教育要領や保育所保育指針、および保育士養成課程や教職課程の改定に伴い内容を一部見直したものです。

改訂する前にも読んでいましたが、今回改訂版が出たため改めて購入しました。「教育原理」に関する本ではありますが、保育士にこそこの本を読んでほしいと思う内容です。

本書は、保育者が教育専門職として教育の原理を学び、教育者としての覚悟と知識と技術(専門性)を持ってその職にあたるための初めの一歩としては最高の良書だと思います。

本書の「はしがき」にはこのように書かれています。

子どもと接する教育専門職には、児童の最善の利益を確保するために、広く深い学びと経験に裏付けられた、目の前の子どもたちを理解する力が必要です。そして科学的根拠に基づく教育実践を計画し、実践する力量が望まれます。さらには実践をやりっぱなしにするのではなく、振り返って評価し、それに基づきさらに実践していく力がますます必要となると言えるでしょう。また、専門職としての自らの各種判断の根拠を対話的に説明する能力を養うことも一層求められてくるでしょう。

上記の意味で「私は子どもと接する教育専門職です」と自信を持って言うことはなかなか難しいように思います。例えば「科学的根拠に基づく教育実践を計画」をするとは具体的にはどのように行うのでしょうか?

教育原理 目次

本書は、3部構成となっており、第Ⅰ部が「子どもの教育の基礎理論」、第Ⅱ部が「子どもの教育の歴史と現在」、第Ⅲ部が「子どもの教育のこれから」とそれぞれに重要なことが書かれています。

《第Ⅰ部 子どもの教育の基礎理論》

  • 第1章 教育とは何か―子どもの福祉を考える
  • 第2章 子どもの教育の今日的課題
  • 第3章 家庭教育
  • 第4章 学校教育
  • 第5章 社会教育と生涯学習
  • 第6章 カリキュラム―教育実践の基礎理論

「第Ⅰ部 子どもの教育の基礎理論」では、教育の意味や教育者の役割に加え、家庭教育と学校教育、さらには生涯教育までの教育に関する基本的な知識や制度と課題を解説しています。

先日、当社のフィンランド研修に参加した施設長にその時の様子をブログに掲載するためにヒアリングを実施しました。

当社ではフィンランドにおける福祉や教育政策や制度、歴史等を事前に調査した上で、現地の保育士や介護士に疑問点を質問します。

それら質問の中にはフィンランド政府や自治体による政策や制度の内容とその背景にかなり突っ込んだ内容もあります。

しかし、現地のどの保育士にどんな質問を聞いても適切に回答がかえってくるそうで、知識だけではなくそれを自分の言葉として説明できる保育士や介護士の勉強量に驚いていました。

例えば日本の保育者が保護者から「保育料無償化」や「虐待」、「企業主導型保育」について質問された場合、その背景や問題点等をどこまで具体的かつ適切に話すことができるのでしょうか?

第Ⅱ部 子どもの教育の歴史と現在

  • 第7章 子ども観と教育観の変遷
  • 第8章 世界の子どもの教育の歴史と現在
  • 第9章 日本の子どもの教育の歴史と現在

「第Ⅱ部 子どもの教育の歴史と現在」では各国の子ども観と教育観の変遷から教育の歴史と現在を解説しています。

実は僕自身、海外の教育・保育事情や教育の歴史に対して今まであまり興味を持つことがなかったのですが、本書を読むことで日本とは違った教育や子どもに対する価値観を知ることができ、特にヨーロッパのオルタナティブ教育に関する教育に興味を持つきっかけとなりました。

また、以前のブログにも書いたのですが当社のフィンランド研修に対する方針の裏付けができたのも大きな収穫でした。

広報ブログ
2018年度フィンランド海外研修《概要・準備編》
2018年度フィンランド海外研修《事前学習編》

 

第Ⅲ部 子どもの教育のこれから

  • 第10章 幼児期の科学教育
  • 第11章 子どもの教育とマネジメント
  • 第12章 子どもと教育専門職

「第Ⅲ部 子どもの教育のこれから」では、乳幼児の発達や認知に関しての最新の知見や保育施設ではなかなか進まない評価手法やマネジメントに関する考え方とともに、社会における教育専門職としての重要性を説明しています。

「教育専門職」として生きること

最後に第1章にある次の一説は北野幸子先生の教育に対する考えを端的に表していると感じたので引用します。

人が人を教育するということは、ある意味僭越なのかもしれない。このように子どもを教育したいという思いや意図と、実際に教育できることには大きなギャップがあるかもしれない。教師の意図に関わらず教育システムが装置と化して、無自覚にも、何らかの機能を果たしてしまっているかもしれない。しかし、学校があり、子どもがいる。そして、教育こそが人を人として形成する。教師とは、子どもの人間形成に関わり、自らも子どもとともに成長し自己実現を図ることができる。厳しく困難があるが、それ以上に喜びや達成感がある、やりがいがある仕事と言えよう。

保育や幼児教育の重要性を社会に伝えていこうと今も積極的に活動をされている北野幸子先生の教育専門職に対する深い愛情と高い期待が伝わってきます。

実は5年ほど前に北野幸子先生とお話をする機会がありました(先生はお忘れだと思いますが)。まだ、保育について何も知らず、保育士資格取得のために勉強をし始めた時期でしたが、その時の先生のお話は、僕自身に保育という仕事のすばらしさを改めて認させてくれるものでした。

本書を読んで改めて我々は保育事業者として少しでもこの期待に応える責任があるのだと感じています。


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